老人ホームでの生活も落ち着き、「そろそろ自宅を売却して、今後の生活費や施設費用に充てたい」というご相談は、不動産の終活においてよくあるケースです。
しかし、いざ売却を進めようとした段階で、思いもよらない問題が発覚することがあります。今回は、当事務所で実際に対応した「再建築不可の不動産」に関するトラブル解決事例をご紹介します。
1. 売却査定で発覚した「道路に接していない(無接道)」問題
ご相談者様には不動産業者のお知り合いがいらっしゃらなかったため、当事務所から信頼できる不動産会社をご紹介し、物件調査と価格査定を依頼しました。
すると、不動産会社の担当者から思わぬ連絡が入ります。
「この土地、公道に接していません。建築基準法上の『再建築不可』になるため、このままでは売却がかなり難しいです。」
一見すると、自宅はきれいに公道に面しているように見えました。何かの間違いではないかと思い、登記簿謄本や公図(土地の配置図)を取り寄せて確認したところ、ご自宅と公道の間に「わずかな他人の土地」が存在していたのです。
ご相談者様ご自身も全く気づいておられませんでしたが、長年、知らず知らずのうちに他人の土地をまたいで公道に出ていたのです。不動産業界では、このような物件を「他人地を跨ぐ」という意味で「またぎ案件」と呼ぶことがあります。昭和時代に開発された古い分譲地などで、時折見られる構造です。
2. 「再建築不可」のままだと何が問題なのか?
建物を建て替える際には、原則として「幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」というルール(接道義務)があります。(参考:大阪市WEBサイトより。「1、敷地と道路の関係について」)
道路との間に他人の土地が挟まっていると、この接道義務を満たさず「再建築不可(新しい建物を建てられない土地)」扱いになってしまいます。その結果、買い手がつかない、あるいは資産価値が大幅に下がってしまうというリスクが生じます。
3. 解決策:行政相談と「同意書」の取得
不動産会社と対応策を協議し、行政の建築指導課へ相談に赴きました。
調査の結果、「他人地の所有者から、通行・利用・掘削に関する同意書を取得できれば、建築基準法第43条第2項第2号(建築審査会の同意)の適用により、再建築が可能になる」という糸口が見えてきました。
最大の課題は、「お隣の土地の所有者が同意書を発行してくれるか」です。
登記簿謄本から所有者の氏名・住所を特定し、ご相談者様から連絡をとっていただきました。交渉の結果、「解決金(10万円)をお支払いすることで、同意書の発行に協力する」との承諾を得ることができました。
4. 司法書士による「同意書」の作成とポイント
今回の事態を受け、将来的なトラブルを防止するための「同意書」の作成は私の事務所にてお引き受けしました。
後日の紛争を防ぎ、新しい買主様へ安心して引き継ぐために、同意書には以下の要点を明記しています。
- 通行・利用・掘削の許可(生活に必要な通行や、インフラ工事等の掘削を認める)
- 利用料は無償とすること(今回の解決金で精算し、月々の通行料等は発生させない)
- 将来の所有者への承継(土地の所有者が変わった場合でも、この同意内容が引き継がれること)
まとめ:不動産の終活は専門家への相談がカギ
当初は予期せぬトラブルに驚かれましたが、関係各所との連携と迅速な対応により無事に問題を解消することができ、改めて売却活動をスタートする運びとなりました。
不動産を「終活」するにあたっては、登記簿や公図を確認して初めて発覚するリスクも少なくありません。特に昭和の時代に建築、分譲された不動産は当時は時代も「おおらか」でしたから、今では少し考えられないリスクが隠れていることもありそうです。売却や相続を迎える前に、一度専門家と一緒に不動産の権利関係を整理しておくことをおすすめします。
当事務所では、不動産の終活や売却に伴う権利調整・登記手続きについてご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

