「せっかく老人ホームに入ったけれど、どうもなじめない…」
当事務所には、このようなご相談が寄せられることがあります。今回は、お母様の老人ホームの「住み替え(転居)」を検討されていたご家族のお話です。
1. 入居してみたけれど「なじめない」というお悩み
ご相談に来られたのは、入居されているお母様のお子様でした。お話を聞くと、どうやら一部のスタッフさんとの相性が合わず、お母様ご自身が「別の施設に移りたい」とおっしゃっているとのことでした。
当事務所では、年間を通じて多くの老人ホーム探し(施設選び)をお手伝いしています。施設によって「リハビリに力を入れている」「レクリエーションが豊富」など特徴は様々です。見学を重ねるうちに、チェックすべきポイントもわかるようになりました。
しかし、どれだけ丁寧に選んでも、年に数件は「入ってみたら違った」と住み替えを検討されるケースが出てきます。
2. 転居で解決する問題、解決しない問題
転居のご相談を受けた際、私がまず丁寧にお聞きするのは「何に対して不満を感じているのか」ということです。なぜなら、環境を変えれば解決する問題と、そうではない問題があるからです。
- 転居で解決しやすいケース:設備、制度、リハビリ体制など、施設側のシステムに不満がある場合
- 慎重になるべきケース:特定の職員さんとの個人間の相性や人間関係が理由の場合
人間関係が理由の場合、新しい施設へ移っても同じように相性の問題が発生する可能性があります。また、相性の良いスタッフさんがいても、異動や退職で離れてしまうこともあります。
3. 一緒に2つの施設を「見学」してみた結果
今回のケースでは、住み替えても確実に状況が良くなるとは言えない印象を受けました。とはいえ、頭の中だけで考えてもご本人は納得しきれません。
そこで、どうせならと言うことで参考に同じ価格帯の老人ホームを2件、一緒に見学してみることにしました。
実際に見学をしてみたお母様の素直な感想は、「今いる施設と、そこまで変わらないかもしれない」というものでした。
4. 納得して決めることが、いちばんの安心になる
ここから先の判断はご本人とご家族にお任せしました。じっくり話し合われた結果、「もう少し、いまの老人ホームで過ごしてみる」という結論になられました。
環境を大きく変える「引っ越し」は、高齢の方にとって体調や認知機能の変化といったリスクも伴います。むやみな移動を避け、ご自身で納得して今の施設に残る決め手ができたことは、結果として良かったと感じています。
おわりに:すぐ結果が出なくても、真摯に向き合う理由
一見すると「わざわざ施設を見学したのに、住み替えなかった」という無駄な時間に思えるかもしれません。しかし、ご本人とご家族が心から納得して選択できたことが何より大切です。
一見、すぐに依頼や契約へ繋がらないように見える時間であっても、一人ひとりの不安に寄り添い、真摯に向き合う。その「小さな信頼の積み重ね」こそが、将来的に法的なお困りごと(成年後見や遺言など)が起きた際に「あの司法書士さんに相談しよう」と思っていただける一番の理由になると、私は考えています。
高齢期のお住まいや生活の不安、将来の備えなど、まずは気軽なお悩みからお気軽にご相談ください。

