当事務所で「任意後見契約」および「見守り契約」をご依頼いただいている、96歳のAさん(おひとりさま・身寄りがない方)の通院同行と医療意思決定サポートの事例をご紹介します。
「身寄りがなく、病院の説明を一人で聞くのが不安」 「任意後見を頼んでいるけれど、元気なうちはどこまでサポートしてくれるの?」
その様な声や不安をお聞きすることがあります。
1. 96歳・おひとりさまのAさんからのSOS(精密検査のご報告)
Aさんは配偶者を数年前に亡くされ、お子さまもおられない「おひとりさま」の高齢者です。判断能力はしっかりとお持ちで、日常の会話も問題なく行えます。
当事務所とは、将来の認知症等に備える「任意後見契約」と、元気なうちから定期的に連絡を取り合う「見守り契約」を結び、病院や施設での緊急連絡先にも私を登録していただいています。
💡 ワンポイント解説
- 見守り契約:お元気なうちから定期的な面談や電話で安否確認・交流を行う契約。
- 任意後見契約:認知症などで判断能力が低下した後に、財産管理や介護手続きなどを代行する契約(※判断能力がしっかりしている間は発効しません)。
ある日の朝、Aさんから電話が入りました。詳しくお伺いすると、「大きな病院を紹介された。来週、精密検査と治療を受けることになった」とのことでした。
2. 「補聴器でも聞き取りにくい」——病院同行と医療意思決定サポートの必要性
Aさんはお元気ですが、ご年齢もあり難聴が進んでおられ、補聴器をつけていても説明が聞き取りにくいことがあります。
初めて訪れる大きな病院で、聞き慣れない医療用語や検査の説明を受けることは、大きな不安を伴います。 「一人で受診しても、説明を正しく聞き取れず、適切な判断ができないかもしれない」
もし検査の結果、入院が必要となった場合には、どんな医療を受けるのか、入院期間はどれくらいになるのかを把握しておく必要があります。また、身元引受人や保証人の調整が必要になるケースも考えられます。
そこで私は、Aさんに次のようにご提案いたしました。
「大きな病院に行くときは私が同行します。お医者様の説明を一緒に聞いて、今後どうして行くか一緒に考えましょうか?」
3. 「頼みたかったけれど…」利用者の配慮と専門家のスタンス
ご提案をした際、Aさんは安心されたご様子で「ぜひお願いします」とおっしゃいました。そして、こう続けられたのです。
「本当はお願いしたかったけれど、先生は忙しいと思って気を使って遠慮していたんよ」
96歳になられても周囲や私への気遣いを忘れないAさんのお人柄に、心から敬服いたしました。同時に、ご本人に余計な気を使わせてしまったことを省みることとなりました。
司法書士としての想い:責任ある「有償サポート」の重要性
私は、通院同行や医療意思決定のサポートも、専門職としての「仕事」として適正な費用(日当など)をいただいてお引き受けしています。
無理に「善意の無償サポート」を謳うことはしていません。無償のサポートは一見親切に思えますが、無理をしていると結局は続きませんし、言葉が下品になりますが、「横着」な仕事になる可能性があるからです。「やってあげている」ような姿勢でご相談者に向き合うことは失礼ですし、私自身の人間性も落とします。
- 事案に応じた無理のない適切な費用をご負担いただく
- その対価として、ご予約を頂いた時間はご本人と真っ直ぐ向き合う
- プロとしての覚悟を持って仕事を完結させる
この積み重ねこそが、依頼者さまとの本当の信頼関係をつくり、万一のときにも最後まで支え続ける責任につながると信じています。
4. まとめ:頼れる身寄りがいない方の「生活の伴走者」として
今回は正式な後見人が発効する前の「見守り契約」の段階ですが、Aさんは日頃から周囲の方に「私の後見人の先生やねん」と紹介してくださっています。
Aさんとは、もしもの時のご希望(医療や終活に関する考え)は日頃の定期的な交流の中で話し合っていますが、今回の通院同行を通じて、改めて「今のご希望」を再確認し、安心して治療に専念できるようサポートしたいと考えています。
身寄りがない方の「これから」について、相談先に確認することは?
- 頼れる親族がいないため、将来の入院や介護が不安
- 病院での説明や手続きに付き添ってほしい
- 「見守り契約」や「任意後見契約」で早めの備えをしておきたい
おひとりさま高齢者の方やお子さまのおられないご夫婦など、様々なご事情の方がおられると思います。まずは相談のお相手の人柄を確認することから始められてはどうでしょうか?
長いお付き合いをする上で考え方や価値観、倫理観などの「相性」はとても重要です。正式なご相談や契約は相性が合うことが確認できてからで大丈夫だと思います。

