「通帳を預かってほしい」その本当の意味は?
先日、当事務所で「公正証書遺言」を作成されたご相談者様から、久しぶりにお電話をいただきました。
「以前作った遺言書の内容を変えたい。それと、自分の今後に自信がなくなってきたから、通帳や印鑑を預かってほしい…」
久しぶりにお会いしてお話をお伺いすると、そこには単なる手続き以上の「将来への不安や寂しさ」を感じました。今回は、このようなご相談に司法書士としてどのように寄り添い、どのような解決策(任意後見・見守り契約)をご提案した理由は。
1. 遺言書は何度でも変更できます(公正証書→自筆もOK)
まず前提として、遺言書は一度作ったら終わりではなく、何度でも書き直す(変更する)ことができます。
法律上、最も新しい日付で作られた遺言書が有効となります。例えば、以前に「公正証書」でしっかり作った遺言書であっても、後から自分で書いた「自筆証書遺言」で内容を変更することも可能です。(参考:日本公証人連合会ホームページより「2遺言の時期、撤回及び変更 Q2」を参照)
今回のご相談者様も環境やご心境に大きな変化があったようで、新しく遺言書を作り直すお手伝いをすることになりました。
2. 「通帳や印鑑を預かってほしい」に込められた本当の気持ち
遺言書の変更とあわせてご相談いただいたのが、「貴重品(通帳や印鑑)を預かってほしい」ということでした。
私を信用して頼っていただけるのは大変ありがたいことです。しかし、十分な契約や取り決めもないまま安易に財産をお預かりすることは、後々の誤解やトラブルのもとになりかねません。
ご相談者の普段のご様子や暮らしをよく観察してみると、次のようなことが見えてきました。
- 物忘れはたまにあるが、大事な記憶や計算能力には全く問題がない
- ご自身の意思や希望は一貫しており、話の辻褄もしっかり合っている
- 持病をお持ちで、将来に対する不安や寂しさを強く抱えておられる
つまり、「判断力が低下して財産管理ができなくなった」のではなく、「一人暮らしの将来への不安や寂しさから、心の拠り所を求めておられた」のです。人は誰しも、体調を崩したり一人で過ごしたりしていると、悲観的になってしまうことがあります。
3. 「任意後見」と「充実した見守り」でつくる、これからの安心
そこで当事務所では、ただ貴重品をお預かりするのではなく、段階を踏んで安心をつくるご提案をいたしました。
① 将来への備えとして「任意後見契約」のサポート
将来、万が一本当に判断力が低下してしまったときに備え、財産管理や介護の手続きを任せられる「任意後見契約」の準備を進めることにしました。
② 今すぐの安心として「見守り契約(定期的な交流)」を強化
これまでは友人・知人のように不定期で連絡を取り合う間柄でしたが、これからは「2ヶ月に1回の定期的なお電話やご訪問(有償の見守りサポート)」を行っていくことになりました。
費用は月に換算すると数千円程度(※契約内容による)の小さなご負担ですが、これによって「定期的に専門家が気にかけてくれる」「いつでも相談できる」という大きな安心感を持っていただけます。
まとめ:一人で抱え込まず、まずは「ちょっとした相談」から
「誰かに通帳を預けたい」「将来がなんとなく不安」と感じたとき、本当に必要なのは財産の管理だけではなく、定期的に顔を合わせて話ができる「信頼できる存在」かもしれません。
私の事務所では、遺言書の作成や変更はもちろん、お一人おひとりの生活や気持ちに寄り添った「見守り」「任意後見」のご提案ができればと願っています。
「老後の暮らしに不安を感じることがあるが、何から相談したら良いかわからない。」
「私の事務所がまだ本当に信頼できるか分からないのに契約や依頼なんてできない。」
と感じられるのも理解できます。
そのような方は、まずは「見守り契約」だけで始めてみて、友人におしゃべりするような感覚で、お気軽にご相談ください。お互いの人間性も分かってきますし、自分に必要な事も自然と分かってくると思います。「大切な事」は信頼関係ができた後にお話し頂いても良いのではないでしょうか。

