上手な制度利用のポイント(利用の後悔を防ぐために)
「後見人をお願いすると、毎月どれくらいの費用がかかるのだろう?」 「不動産の売却目的で後見人をつければ、すぐに売れるのだろうか?」
成年後見制度の利用を検討される際、費用や手続きに関してこのような疑問や誤解を抱えている方は少なくありません。
司法書士として多くの現場に立ち会ってきた経験から、「成年後見人の報酬の決まり方」と、後悔しないための「制度の上手な利用方法・注意点」について詳しく解説します。
1. 成年後見人の報酬はどのように決まるのか?
裁判所の審判によって決定される
報酬は、年に1度のペースで後見人が裁判所に対して「報酬付与の申立て」を行い、裁判所の審判によって金額が決定されます。裁判所は、その年に後見人が行った仕事の難易度や量、本人の資産状況などを総合的に考慮して判断します。(参考:裁判所ホームページ「報酬の付与(成年後見制度、未成年後見制度)」より)
報酬算定の具体的な基準や計算式は明確に公表されていません。「良い点・改善点」について現在も議論が続けられている分野ではありますが、私たち司法書士は裁判所の決定した審判内容に従い、ご本人の財産の中から報酬を受け取る仕組みとなっています。
負担の大きさと報酬のバランスが合わない時もある
実際の現場では、就任初期や終了時に大きな精神的負担がかかるケースが多々あります。
- 就任直後に発覚する「多額の債務整理」
- 近隣住民との深刻なトラブルや、身体(経済的)虐待事案の解決
- 突然の訃報に伴う、身寄りなき方の火葬・納骨手続きや、協力的でない相続人との折衝
現在お引き受けしている、ご自宅がゴミ屋敷化して大家さんから退去を求められているような事案も、関係者の感情がぶつかり合う中でストレスが多い事務処理を強いられます。
どれほど苦労の多い案件であっても、最終的には「ご本人の経済状態(支払能力)」が最優先で考慮されます。そのため、労力に対して報酬が割に合わないと感じる場面もありますが、司法書士としては裁判所の審判を受け入れる覚悟を持って業務に臨むしかありません。
2. 後悔しないための「上手な成年後見制度の利用方法と注意点」
ご家族が良かれと思って申し立てたものの、「こんなはずじゃなかった」とトラブルになるケースがあります。制度を正しく利用するために、以下のポイントを事前にしっかり理解しておきましょう。
① 希望通りの人が後見人になるとは限らない
「親族を後見人にしたい」「いつもお世話になっている特定の人に頼みたい」と希望して申し立てをしても、裁判所が選任するのは必ずしもその候補者とは限りません。第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職)が選任されることも多々あります。
また、後見人はご家族や支援者と相談しながら動きつつも、最後は「法律とご本人の利益」を考えて、自分の良心と職責に基づき独自に判断します。時として、ご家族と意見を異にすることもあるかもしれません。その意味で、ご家族の「言いなり」になる存在ではない点を理解しておく必要があります。
② 本人の利益が優先され、自由な財産処分はできない
成年後見制度は、あくまで「ご本人の生活と財産を守るため」の制度です。
- 原則として、本人の財産やお金は本人のためにしか使えない
- 将来の相続対策を目的とした「生前贈与」「不動産の売却」「借入れ」などは原則としてできない
よくある誤解として、「認知症になった親の不動産を売って現金化したい」という目的で後見人の選任を急ぐケースがあります。しかし、不動産の売却には裁判所の許可が必須であり、本人の生活維持や医療・介護費用の確保といった明確な必要性がなければ、裁判所は売却を許可しません。
③ 「目的の誤解」から起こるミスマッチに注意
「利用したけれど、自分の望む結論にならなかった」と不満を抱く方の多くは、制度の本来の目的や背景を誤解したまま、ご自身で裁判所に書類を揃えて申し立てをしてしまったケースに見られます。
- どのような社会背景・経済事情の人が利用しようとしているのか
- 何を目的として利用しようとしているのか
これらを十分に検討しないまま手続きを進めると、のちの大きな後悔につながりかねません
3. 申立ての前に、必ず専門家へ相談することがお勧め
ご本人の状況や「何を解決したいか(動機)」によっては、成年後見制度以外の選択肢のほうが適している場合もあります。例えば、財産管理や資産承継の目的であれば、家族信託や商事信託といった別の法的手法が有効なケースもあるでしょう。
「自分で裁判所に書類を持っていく前に、まずはどういう選択肢があるか知りたい」という方は、ぜひ一度、相続や財産管理を専門とする司法書士や弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。「後見申立てのサポート」も可能ですし、状況に合わせた最適な選択肢をご提案いたします。

