家族を迷わせないための生前対策
最近、ある依頼者の方の最期のお看取りをいたしました。その方は自分の最期の医療方針について「尊厳死宣言公正証書」を記されていました。
最近では、自分が人生の最期を迎えるとき、どのような医療を受けたいか。その意思を自分で決めておく事の大切さも「終活」の一つとして知られ始めています。
意思表明の方法はいくつかありますが、私たち法律の専門家がお勧めしているのが、「尊厳死宣言公正証書」を通じて終末期の医療方針を明確にしておくことです。
なぜ終末期の医療方針を「書面」で残すべきなのか?
「延命治療を望むか否か」という言葉はよく耳にしますが、その内容は多岐にわたります。
- 具体的な延命行為の例:
- 人工呼吸器の装着
- 心臓マッサージ
- 胃ろう造設や経管栄養(口から食事が摂れない場合の栄養補給)
「延命治療は不要」と口頭で聞いていても、いざその時を迎えると、家族や支援者は「本当に栄養補給もすべて止めてよいのか」と大きな判断の迷いや葛藤(ブレ)に直面します。支援者の判断がそのまま生死に直結するため、その精神的負担は計り知れません。
あらかじめ書面で「食事の経口摂取ができない状態になった場合は、栄養補給を含めた延命治療は希望しない」などより具体的な方針を示しておくことで、家族の精神的なストレスを大きく軽減することも考えられます。
成年後見人の現場から:方針がない場合の葛藤
私の事務所でも、複数の成年後見人をお引き受けする中で、ご本人が最期を迎える時期に医師から医療方針を確認されることがあります。
本来、成年後見人には医療行為に関する同意権はありません。しかし、医師に対して方針を示さないまま医療の継続を求めることも酷であり、実際には医師からの「相談」という形で後見人に問い合わせが入ります。
この時、ご本人の終末期医療方針が事前に定められていない場合、後見人としての精神的なストレスは大きく、簡単に割り切れないものがありました。
こうした現場の経験から、当事務所で身元保証や任意後見人をお引き受けするお客様には、必ず「終末期の医療方針」を事前に定めていただくようお願いしています。
成年後見人、保佐人、補助人に就任した場合は、その方のご状態によるので必ずとはいきません。しかし、可能な限り「終末期医療についての考え」を聞き取ろうと努力しています。
公正証書で「尊厳死宣言」を作成するメリット
ご相談者の多くは「延命行為は希望しない」と希望されます。その意思を確実な形にするため、当事務所では公証役場にて「尊厳死宣言公正証書」の作成をご案内しています。
任意後見契約書も公証役場を利用して作成するため、同時に手続きを進めるケースがほとんどです。
口頭でお伝えいただいただけでは、時間が経つにつれて支援者の記憶が曖昧になり、自信をなくして判断に迷いが生じてしまいます。だからこそ、公証人の面前で宣言し、それを「公正証書」という形で残しておくことが大切なのです。
終活の一環として医療方針も考えてみませんか?
終末期の医療方針をあらかじめ定めておくことは、ご本人が望む最期を迎えられるだけでなく、残された家族(支援者)の精神的な負担を軽くすることにも直結します。
ご自身の「すっきりとした最期」と「大切な家族(支援者)への思いやり」のために、終活を検討される際はぜひ一緒に「終末期の医療方針」についても考えることをお勧めします。

