意思疎通が難しいご本人の面会と、現場のプロの力
成年後見制度を利用する方の成年後見人になりましたので、施設へ定期面会に行きました。成年後見人の仕事は財産管理が中心と見られがちですが、ご本人と面会などを通じてご本人の状態を確認することも仕事の一つです。
今回、面会に訪問したご本人は寝たきりの状態であり、発話もほとんど見られません。そのため、意思疎通を図ることは非常に難しく、訪問してもご様子を見守ることが中心となります。「面会」といってもその内容はさまざまであり、このように静かにご様子を伺うことが主なケースもあります。
一見すると意思疎通が難しいと感じられる方であっても、本当は何らかの感情や意思をお持ちであるはずです。しかし、それを汲み取るには専門的な経験や力量が求められます。医療・介護の現場に身を置くプロではない私たち司法書士にとって、その見極めにはどうしても限界があります。
そうした場面で頼りになるのが、施設の職員さんや担当のケアマネージャーさんからのヒアリングです。
毎日ご本人に寄り添い、細やかなお世話をされている職員さんから、表情が変化する際のエピソードをうかがうと、「やはりご本人には確かに意思があるのだ」と改めて気づかされます。また、経験豊富なケアマネージャーさんからお話しを伺い、その上でご本人のご様子を拝見すると、さまざまな状況がより「深く腑に落ちる」「合点が行く」ことも少なくありません。
ケアマネージャーの仕事にみる「人間力」とバランス感覚
ケアマネージャーというお仕事の範囲は非常に広く、時には本来の職務の枠を超えた対応を求められることもあると耳にします。全てを引き受けてしまえばご自身が疲弊してしまいますし、逆にドライすぎれば利用者や家族の不評を買ってしまい信頼を損ないます。その絶妙なバランスを保つ「人間力」や「距離感」が求められる、大変なお仕事だと感じます。
利用者やご家族の視点に立てば、どのようなケアマネージャーに出会えるかによって、施設や在宅での生活に対する「納得感」や満足度は大きく変わってくるはずです。ケアマネージャーさんによって利用者に対する着眼点が異なるので、提案される「ケアプラン」の内容も違います。私の知り得る限りでは、どのケアマネージャーでも「結果」や「満足度」が同じと言うことは無いと思います。
法律の専門家に求められるものも、実は同じではないか
他方、私たち司法書士は「法律事務の専門家」と位置づけられています。不動産登記などの手続きでは「誰がやっても結果は同じ」など言われることもあります。ただ実際に依頼してみると、アプローチや進め方には司法書士ごとにかなりの個性があることが分かります。
実際、「担当する司法書士の依頼者に対する姿勢や対応次第で、関係者が心を閉ざしてしまい、事件処理がスムーズに進まなくなってしまった」というケースは、現場では意外と多いものです。
そう考えると、法律を扱う仕事であっても、最終的に執務するのは「人間」です。司法書士の業務においても、ケアマネジャーの仕事と同様に、人間力やバランス感覚が不可欠であると痛感します。机上の知識ではなく、現場で培われる「知恵」を得るにはやはり時間 と経験が必要であり、ここに両者の仕事に通じる共通点を見出す思いがします。
信頼を得て真意を探り当てるということ
目の前の人(利用者・依頼者)を丁寧に観察し、その人が「受け入れやすい言葉」や「溶け込みやすい態度、身なり」を心がける。そして信頼関係を築きながら、本当の思いを知り「納得」して頂ける所を探り当てる――。どちらの職業も依頼者・利用者に迎合しているだけでは成り立ちません。長年現場に立つベテランのケアマネージャーや司法書士は、きっと自然とそれができているのだと思います。

