相続登記のご相談から見えた「思わぬ共有状態」
先日、不動産の相続登記についてご相談をいただきました。
登記簿謄本を確認すると、所有者は2名で、それぞれ持分が2分の1ずつの「共有名義」になっていました。 お亡くなりになられたのは、そのうちの1名の共有者である「ご相談者のお母様」。今回は、お母様の唯一の相続人であるご相談者名義へ、相続登記をしたいというご依頼でした。
お話を伺う中で、いくつかの気になる点が浮かび上がってきました。
- もう一人の共有者は誰?:「会ったことはないけれど、親戚のようです」
- 現在住んでいるのは?:「その親戚の方が住んでいるようです」
- なぜ共有になったのか?:「全く聞いたことがありません」
一通りのご相談を聞き終えて、私は少し心配になりました。 なぜなら、ただ形式的に相続登記を済ませるだけでは、ご相談者の本当のお悩み解決にならないからです。お母様の持分を引き継いでも、その不動産は見知らぬご親戚がすでに住んでおり、ご相談者が自由に利用することは難しい状況だったからです。
将来のリスクを見据えた解決への方針
このままでは、ただ相続登記を代行して終わりになってしまい、将来的にご相談者がお困りになるリスクが残ってしまいます。
そこで、ご相談者としっかりお話し合いをし、次のような方針を立てました。
- まずは法的な義務である相続登記を速やかに完了させる
- 相続登記を終えた持分を、もう一人の共有者(ご親戚)に売却する
当初は、「ご相談者ご本人がお手紙を書いて事情を説明し、持分の買い取りをご提案してはどうか」と考えていました。しかし、ご相談者からは「自分には交渉なんてできそうにないし、トラブルになったらと思うと怖いです……」と、不安そうなご様子でした。
司法書士によるサポートと代理交渉
司法書士は、簡易裁判所の管轄に属する事案(目的物の価額が140万円以下のもの)であれば、弁護士と同様に代理人として示談交渉を行うことができます。この時点では、必ずしも紛争になるかどうかは不明でしたが、もし条件面などで争いが生じ始めたら共有物分割をめぐる法律問題となります。この場合は、弁護士か司法書士以外は業として交渉を行うことはできません。
さっそく固定資産税評価証明書を調査したところ、ご相談者の持分価格は140万円の範囲内に収まることが分かりました。
そこで、方針を以下のようにブラッシュアップしました。
- ① 母親の持分の相続登記を速やかに完了させる。
- ② 相続登記の終了後、司法書士がご相談者の代理人となり、もう一人の共有者へ連絡して持分の購入をご提案する。
双方にとってベストな解決を考える
相続登記を終えた後、私からもう一人の共有者の方へ書面にて丁寧にご事情をご説明しました。
突然のご連絡に最初は大変驚かれていたご様子でしたが、「持分を購入して完全な所有権を手に入れるメリット」を冷静にご理解いただくことができました。結果として、無事にもう一人の共有者へ持分を売却することができました。
ご相談者は持分を売却した金銭を取得でき、もう一人の共有者の方は不動産の完全な所有権を手に入れることができたのです。
この解決が上手くいったのは、以下の理由が大きいと感じています。
- ご相談者が他人を困らせようとしない人格者で、最初から欲張らずに、極めて良心的な売却価格にご納得いただけたこと
- もう一人の共有者の方も、こちらのお話を誠実に聞いて心を開いてくださったこと
- 司法書士と言う第三者が冷静に事情を説明したこと。(書面も丁寧に礼儀を尽くすよう心掛けたつもりです)
もし、この方法が難しければ「持分専門の買取業者」という選択肢もありましたが、できれば避けたい方法でした。だからこそ、今回は双方にとって最も穏当で、ベストな着地点だったと感じています。

