高齢者の住居探しは、想像以上に困難を伴うのが現実です。年齢を理由に、一般的な民間賃貸物件では入居を断られてしまうケースが少なくありません。
大家さんが高齢者の入居に慎重になる主な理由は、「室内の孤独死リスク」と、それに伴う「その後の賃料低下への懸念」です。そのため、高齢者のお部屋探しは「サービス付き高齢者向け住宅」や「有料老人ホーム」が中心になりがちです。
民間賃貸がダメなら「UR賃貸」という選択肢
現在、私の事務所にご相談いただいているご相談者は、少し物忘れはありますが年齢相応のものであり、認知症ではありません。まだお元気なため、「老人ホームにはどうしても抵抗がある」とのことでした。
転居の必要が生じたため当初は民間の賃貸物件を探したものの、入居審査がどうしても通らず、私の事務所を紹介されご相談に来られました。身元保証人になってくれそうな心当たりもないようで、いろいろ検討した結果「UR賃貸」をご提案しました。
UR賃貸であれば、以下の条件を満たせば高齢者でもスムーズに入居が可能です。
- 家賃の1年分を一時払いできること(入居から1年経過した後は月払いに変更可能)
- 緊急連絡先になれる人がいること(※保証人ではなく、あくまで連絡先)
これらの条件をクリアできれば、収入の厳しい審査はなく、保証人も不要です。さらに、「高齢であること」を理由に入居を拒否されることもありません。
緊急連絡先の確保と「死後事務委任契約」の活用
ご相談者は家賃の1年分前払いは可能でしたが、課題となったのは「緊急連絡先」の存在でした。知人などに負担や迷惑をかけたくないというご希望もあり、私の事務所でサポートすることになりました。
具体的には、当事務所の司法書士を受任者とする「死後事務委任契約」を締結し、さらに司法書士がUR賃貸の契約にも同行して、緊急連絡先を引き受ける形をとりました。
死後事務委任契約とは
簡単に言えば、ご自身の死後の諸手続きを、生前に契約書で委任しておく仕組みです。
- 賃貸借契約の解除・未払い家賃の清算
- 室内の家財道具の処分
- 葬儀や納骨の方法の指定・手配など
私文書でも作成は可能ですが、トラブル防止や確実性を考慮し、私の事務所では「公正証書」での作成をおすすめしています。実際、納骨に関するご依頼がある場合、公正証書による契約書でないと寺院が受け付けてくれないケースもあるためです。
焦らず、信頼関係を築きながら進める終活
司法書士が緊急連絡先となっているため、完全ではありませんが、万が一の異変があった際にも迅速に対応できます。
任意後見契約のご提案も頭をよぎりましたが、一度にすべてをご案内するとご相談者の負担(消化不良)になってしまいます。また、任意後見契約を円滑に機能させるには、後見人とご本人との「相性」も非常に重要です。
まずは、現在一番の困りごとである「住居探し」を一緒に解決しながら信頼関係を築くこと。そして将来的に、任意後見や保佐・補助といった法的手続きについてもご相談いただけるよう、少し時間をかけてお互いを理解し合っていくことが大切だと考えています。
終活は、一度にすべてを完璧に取り組む必要はないと思います。ご相談者が望まれるペースや距離感があります。これに合わせ、時間をかけて形にしていくことも大切なアプローチではないでしょうか。

