先日、老人ホームにご入所中の方から「自分の後見人になってほしい」というご相談を受け、実際に施設へ面会に行ってまいりました。
今回ご相談に来られた方は、ご自身でしっかりと考え、私たちの事務所を探して依頼してこられた方です。そのため、現時点で認知症などの症状は見られず、むしろご自身の将来を深く案じ、主体的に行動されるだけの十分な判断能力をお持ちであると感じました。
身寄りのない不安と、ご兄弟の高齢化
ご相談者様はご結婚歴がなく、お子様もいらっしゃいません。これまで身の回りのことや金銭管理はご兄弟が支えてこられましたが、そのご兄弟もご高齢になり、ご自身の健康やご家族のことで手一杯になってしまいました。その結果、ご相談者様を気にかける余裕がなくなってしまったのです。
頼れるご親族が他にいない中、「もしご兄弟に何かあったら、自分の後ろ盾がなくなってしまう」という強い不安を抱えておられました。そうした状況の中で、ご兄弟が当事務所を相談先として見つけ、ご本人にお伝えいただいたことで今回の面会へとつながりました。
「後見人」という言葉に隠された本当の思い
面会してお話を伺うと、ご相談者様は「後見人になってほしい」とおっしゃいます。しかし、その本音を紐解くと、法律上の厳密な意味での後見人というよりも、今後の「身元引受人のような存在」になってほしい、「安心して話せる相談相手がほしい」という切実な気持ちが込められているようでした。
このように、一般の方が口にされる「後見人」という言葉と、法律上の「成年後見人」の意味にはズレが生じるていることがよくあります。
法律上の成年後見人は、原則として「精神上の障害により事理弁識能力が欠如している状態」であることが前提となります。今回のご相談者はしっかりとお話しができるため、この法定後見の制度は該当しません。また、判断能力の低下が少し見られる方を対象とする「保佐人」や「補助人」の制度も、現在の状態像とは少し異なります。
実際にご相談者と面会した司法書士は、ご相談者の状態を次のとおり評価しました。
- お話の中に強いこだわりや被害妄想的な発言も一部見られたが、会話の内容自体は一貫している。
- 時間を置いて質問や聞き方を変えても、ご相談者の考えに矛盾点はない。
これらを総合的に判断し、ご相談者様の「こだわり」や「心配性から来る不安感」は個性なのであって、理解力や判断能力そのものは正常であると考えました。
最適な解決策としての「見守り契約」と「任意後見契約」
そこで今回は、以下の2つの契約を公正証書で結ぶことをご提案しました。
- 見守り契約:判断能力がしっかりされている現在、定期的な面会や連絡を通じて様子を見守る契約です。金銭管理はまだ行わず、いわば「個人の顧問契約」や「身近な相談相手」のような形でサポートします。必要に応じて、代理人として行動することも可能です。
- 任意後見契約:将来的に判断能力が低下した時に備え、あらかじめ「この人に後見人になってもらう」と決めておく契約です。将来、状態が低下した段階でこの契約を発効させ、本格的な財産管理や後見業務を開始します。
オーダーメイドのサポートで、相談者に応じた安心を
当事務所では、「見守り契約」の内容や面会の頻度、費用などは、ご相談者様のご希望や個性に合わせて一つひとつオーダーメイドで組み立てています。今回のご相談者様についても、こうした柔軟な方法で今後のサポートを進めていく予定です。
身寄りのない方や、将来の財産管理・身元引受人について不安を感じている方は、判断能力が十分にあるうちから準備を始めることが大切だと思います。

